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Tokyo Python Spring Talks:メール、モノレポ、そしてPythonに残る理由
2026年4月15日に、東京にある国際工科専門職大学(IPUT)のGDG on Campusで開催されたTokyo Python Spring Talksで登壇してきた。テクニカルトーク2本、ネットワーキング中の充実した会話、そしていくつかの思いがけない出会いがあった良い夜だった。
Tokyo Pythonは2017年にWilliam Touzalinが設立したミートアップで、あらゆるレベルのPythonistaを歓迎するコミュニティだ。昨晩もベテラン開発者から学生、初参加の方まで幅広い参加者が集まっていた。
トーク
Ankhbold Batbaatar — GDG on Campus IPUTについて
Ankhboldさんがオープニングで、IPUTの学生主導のGoogle Developer Groups(GDG on Campus)について紹介した。グローバルなGDGネットワーク、参加者1000人以上のDevFest Tokyo、Google Developer Expertsを招いたハッカソンの取り組みなど。大学コミュニティが技術分野で着実に活動しているのを見ると、心強いものがある。
Iqbal Abdullah — 送信ボタンを押したら何が起きるのか
これは私のトークだ。いつもの「Python Anonymous」のくだり(こんにちは、Iqbalです。Pythonを使っています)で始めたが、期待通りの反応だった。Pythonのメールエコシステムについて話した。このテーマを選んだ理由は、2ヶ月前にカスタムドメイン向けメール転送・送信サービスKaiMailをリリースしたからだ。動機はシンプル:開発者はドメイン名をたくさん持っている(私も例外ではない)のに、そのドメインでメールを使うのは面倒。そしてオープンソースコミュニティが自分のドメインでメールを使うために大企業にお金を払う必要はないはずだ。
メールの歴史(ウェブより20年も古い)、コアプロトコル(SMTP、IMAP、POP3)、そして現代のメールを支える認証メカニズム(SPF、DKIM、DMARC、ARC)を解説した。Python側では、emailとsmtplibでのメール解析、dkimpyでの署名、pyspfでのSPFレコードチェック、ARCチェーンの処理(ヘッダーの順序を逆にする必要があり、最初はこれでハマった)を紹介。31枚のスライドを20分で駆け抜けたので、かなり急ぎ足だったが、要点は:Pythonの標準ライブラリにはメール関連の包括的なサポートがあり、サードパーティのライブラリが認証と署名の部分を補完してくれる、ということだ。
PyCon Asiaについても少し触れ、最近のマニラでの会議の写真を見せた。このエリアにいてまだPyCon Asiaに参加したことがない方は、ぜひチェックしてみてほしい。この地域で最大級の国際Pythonカンファレンスだ。ヨーロッパやアメリカまで行かなくても参加できる。マニラでの体験はKafkaiブログにも書いている。
ご興味があれば、私のトークについての記事と、スライドはこちらからご覧いただける。
Ben Allen — uvワークスペースによるモノレポの開発とデプロイ
Benさんはuvワークスペースを使ったPythonモノレポの管理について、実践的なトークをした。uvが登場する前は、Pythonベースのモノレポを扱う標準的な方法がなく、各チームが独自のソリューションを組み立てていた。
ケーススタディとして、S&P ETFのラグ検出システム(3つのマイクロサービスと共有ライブラリ)を使い、pyproject.tomlのワークスペース設定がすべてを1つのロックファイルと1つの仮想環境でまとめる仕組みを解説した。Dockerのデプロイ戦略が特に参考になった。--frozenと--no-install-workspaceフラグを使ったマルチステージビルドで、依存関係のインストールとソースコードを分離し、ビルドを高速に保つ方法だ。セキュリティのコツも共有してくれた:PyPIで3日以内に公開されたパッケージの読み込みを防ぐ設定で、サプライチェーン攻撃から身を守れる。
Benが言った一言が印象的だった。最近はデプロイスクリプトにbashを使っている、LLMがかなり良いbashを書いてくれるからと。ORMと生SQLの関係と似ている、もう自分で書く必要はない。自分はマネージャーだ、と。
ネットワーキングでの会話
ミートアップの本当の価値は、ネットワーキングの時間にあると思っている。
Colinさん(CodeHQ)とは長めに話した。自分のカスタムドメインでメールを受信するためだけにGoogleに月10ユーロ払っていて、納得いっていない。私も同感だ。まさにKaiMailが解決しようとしている問題。オープンソースコミュニティが、私たちのお金を必要としていない大企業にお金を払わなければならない理由はないはずだ。デジタルサブスクリプションの膨張は本当に深刻で、ここで10ユーロ、あそこで10ユーロ、気がつけば月100ドル使っている。
ブラジル出身のKenjiさんにも出会った。Pythonミートアップ初参加。以前は日本の工場で働いていたが、その後開発者に転身したそうだ。まったく異なるバックグラウンドからキャリアチェンジした人の話を聞くのは、いつも興味深く素晴らしい。Pythonがその過程で何らかの形で役に立っていたようだ。
面白い場面もあった。同じくミートアップに参加していたTinishさんとBuckyさんがマレーシア人だと判明し、会話の途中からマレー語に切り替わった。TinishはBatu Caves出身、BuckyはPuchong出身で、どちらも私にとって馴染みのある地域だ。Tinishは在日マレーシア学生協会のメンバーで、「働いているマレーシア人に会うのは久しぶり」と。もっと幅広い技術コミュニティに参加してほしいと伝えた。
香港から来日中のCalvinさんとも少し話した。彼はアジアのカンファレンスサーキットの常連で、今後のコラボレーションの可能性について話し合った。これはまた別途お知らせできると思う。
アルメニアのスタートアップ創業者にも会った。5月1日まで東京に滞在し、Python開発者に自分たちのプロダクトを紹介中とのこと。メディアアップロードのマイクロサービスをNode.jsからPythonに移行したら、8秒から2秒に短縮されたという面白い話を聞いた。それはライトニングトークのネタだよ、と伝えて、次のミートアップでスロットを確保するためにBenのところに一緒に話しに行った。SusHi Tech Tokyo 2026にも来るそうで、Kafkaiも4月27-29日に公式アンバサダーとして出展する。
なぜPythonに残るのか
ミートアップで印象に残った会話がある。なぜPythonを使い続けるのか、と聞かれた時に答えたこと。言語のためではない、と。人のためだ、と。Benさん、Kelvinさん、PyCon JP、PyCon MY、そしてアジア各地のコミュニティで出会った人たちのため。Pythonのコミュニティこそが、人を惹きつけ続けているものだと本当に思っている。
Tokyo Pythonのようなミートアップはそういう場所だ。テクニカルな内容だけではなく、そこで生まれるつながりとその後の会話にこそ価値がある。
コミュニティ活動についてもっと知りたい方は、PSFコミュニティサービス賞の記事や、DjangoCon Africa、ダッカPythonミートアップのレポートもぜひ読んでほしい。
運営への感謝
つい当たり前に思ってしまいがちだが、こうしたミートアップの裏には運営者の地道な努力がある。そして、人がコミュニティに残り続ける理由として、運営者の存在は最も重要な役割を果たしている。会場やスポンサーを探し続け、人が集まり知識を共有できる場を提供し続けること、それこそが人がそもそも残れる理由だ。
コミュニティの運営者、ホスト、MCとしていつも尽力してくれているBen AllenさんとAi Matsushitaさんに心から感謝したい。
次回のミートアップ
Tokyo Pythonの次回イベントは5月20日(水)19:00-21:00、目黒のLe Wagonで開催されるライトニングトークだ。東京にいる方はぜひ来てほしい。初めてのトークを考えている方には、ライトニングトークが最適だ。5分間だけ。それだけだ。
Tokyo PythonはMeetup.com、ウェブサイト、Discordで見つけることができる。