以前、「SEOは死んでいない、だがGEOは避けて通れない」という記事で、ChatGPTからの流入はGoogleの約2%だと書いた。正直に言うと、この数字は十分に確かめないまま使っていた。
先日、SEOコンサルタントのマリー・ヘインズ氏が、この点を実データで調べた結果を公開した。100サイト・12か月分のGA4データ、合計1億4585万セッションを集計したものだ。タイトルは「GEO is a distraction」(英語)で、「GEOは寄り道だ」という意味になる。
結果は、ChatGPTからのセッションがGoogleオーガニックの0.62%。ChatGPTを含むLLM全体でも0.73%だった。私の2%は、3倍ほど多すぎたことになる。
なお、日本では同じ取り組みをLLMOやAIOと呼ぶこともある。この記事では、ヘインズ氏に合わせてGEOと書く。
1,000件の訪問のうち、LLM経由は7件
ヘインズ氏は、調査の結果を1枚の図にまとめている。検索エンジンとAIツールからの訪問を1,000件とすると、Googleオーガニックが993件、LLM全体が7件だ。
セッション数で見ると、Googleオーガニックが1億4478万8763、LLM全体が106万2833だった。チャットツールから1回の訪問があるあいだに、Googleからは約136回の訪問がある。
LLM経由の内訳は次のとおりだ。
- ChatGPT:約90万5000セッション(Googleオーガニック比0.62%)
- Gemini:約5万3000セッション(同0.04%)
- Perplexity:約4万セッション(同0.03%)
- Copilotほか:約6万3000セッション(同0.04%)
LLM経由の流入のうち、約85%がChatGPTだ。「AI検索からの流入」と言っても、実態はほぼChatGPT1つの話である。
以前、「AIでの露出を上げます」という営業メールについて、慌てる必要はないと書いた。今回の数字は、その考えを裏づけている。オーガニック検索の0.62%しか人を連れてこない経路なら、様子を見ておけば十分だ。マーケティングの体制を組み替えるほどのものではない。
コンバージョン率は高いが、件数は少ない
この調査には、単独で引用されそうな数字がある。誤解されないよう、もう1つの数字と並べておきたい。
100サイトのうち、GA4でコンバージョンを計測していたのは55サイトだった。そのコンバージョン率は、Googleオーガニック経由が3.02%、ChatGPT経由が13.8%。ChatGPT経由のほうが4.6倍高い。
一方で、ヘインズ氏が分析した経路全体のコンバージョンのうち、96.5%はGoogle経由だった。件数で比べると、LLM全体の27倍になる。
つまり、ChatGPTから来る人はよく成約する。ただ、人数が限られているので、合計は小さいままだ。
私は「トラフィックは悪くないが、コンバージョンを生むのは信頼である」で、アクセス数よりコンバージョンが大事だと書いた。今もそう考えている。ただ、コンバージョン率とコンバージョン数は別物だという点は、あの記事では書けていなかった。
経路をコンバージョン率で並べると、ChatGPTが1位だ。それを見て、いちばん小さい経路に予算を移してしまうのは避けたい。
13.8%という数字から分かることもある。ChatGPTから来る人は、すでに質問を済ませ、選択を絞ってからサイトに来ている。質の高い流入であることは確かだ。人数が限られているだけである。
ChatGPTからの流入は2025年8月から伸びていない
ヘインズ氏のデータでは、ChatGPTからのセッションは2025年8月のGPT-5公開まで増え続けた。その後は横ばいになり、少しずつ減っている。
2023年ごろ、私も含めて一部の関係者は、この伸びが続けばいずれGoogleに追いつくと考えていた。実際には、そうなっていない。
もちろん100サイトの標本なので、この1つの変化を重く見すぎるつもりはない。それでも、「AIからの流入が急増している」ことを理由にGEOサービスを勧められたら、いつの時点のデータかは確認したほうがよいでしょう。
100サイト中45サイトはコンバージョンを計測していなかった
私がいちばん驚いたのは、100サイトのうち45サイトが、GA4のキーイベントを1つも設定していなかったことだ。
ほぼ半数である。サイトもアクセスも売上目標もあるのに、どの経路から購入や予約、問い合わせが来たのかが分からない。
AIの話より、こちらのほうが大きな問題だと思う。キーイベントがなければ、自社のデータが何を意味するのか判断できない。ヘインズ氏の0.62%は、あくまで100サイトの平均だ。自社では0.2%かもしれないし、4%かもしれない。計測を始めるまでは分からない。
やることは難しくない。
- 自社にとっての「コンバージョン」を1文で決める。購入、問い合わせフォームの送信、商談の予約、無料トライアルの開始などだ。
- GA4でキーイベントとして設定し、実際に記録されるかを確認する。
- そのうえで、経路ごとに比べる。
Kafkaiでは、ドメイン認証を済ませるとGA4のデータを直接読み込める。アクセスとコンバージョンの数字を、書き出さずにプロジェクトの中で確認できる。接続方法はGA4連携の手順にまとめた。
アクセスが増えても売上につながらないときに何を見るべきかは、こちらの記事で書いた。ブラウザによるサードパーティCookieの制限で、計測の前提も変わってきている。実際の経緯はサードパーティCookieの消滅で整理した。自社サイトで取れるファーストパーティのイベント計測は、もはや最低限の準備である。
今、人を送ってくれるAI検索はGoogle
ヘインズ氏の結論は、現在ビジネスに人を送ってくれるAI検索はGoogleだ、というものだ。具体的には、AI Overview(AIによる概要)、AIモード、そしてAIを中心に動くようになった検索順位の仕組みを指している。
これは、以前紹介したAI Overviewの対照実験とも一致する。検索結果からAI Overviewを外すと、外部サイトへのクリックは68%増え、訪問の質も落ちなかった。AI Overviewは、情報収集系の検索の53%、購入に近い検索の約15%に表示される。
クリックが減っているのは主に情報系のページである。ここは企業がコンテンツ予算をかけている部分と重なる。Googleはこれまでより、さまざまな質問に検索結果の画面で答えるようになった。それでも、検索からの流入のほとんどは今もGoogleから来ている。
「GEOは避けて通れない」と書いた記事について、今の考えを書いておく。あの記事で勧めた書き方は、今も正しいと思っている。明確な答え、根拠、執筆者の明示、情報を拾いやすい構成のことだ。ただ、これはすべてSEOそのものである。別の名前も、別の予算も要らない。
流入を約束するGEOの月額サービスにお金を払うつもりもない。ヘインズ氏のデータで言えば、そのサービスが狙っているのは0.62%の流入だからだ。
AI Overviewの中の引用も同じだ。AIによる概要の引用クリック率を調べた分析では、AI Overviewが表示されたページの外部クリックのうち、回答の中のリンクから来たのは7.1%だった。引用されれば名前は目に入るが、訪問者はあまり増えない。
反論にも一理ある
ヘインズ氏の投稿には、反論が寄せられた。数字には同意しつつ、結論には反対する意見がいくつもあった。うなずける点もあったので、紹介しておく。
1つ目は、クリック数ではAIの影響を測りきれない、という指摘だ。AIツールは答えを返すためのもので、サイトに人を送るためのものではない。ChatGPTで答えを得た人が、そのあとGoogleで社名を検索したり、電話をかけたり、直接お店に来たりする。GA4では、これがダイレクト、指名検索、Googleオーガニックとして記録される。ガエタノ・ディナルディ氏は、この点を中心に返信していた。数字は正しいが、比較検討の段階がAIに移っていることを見落としている、という意見だ。私も同じ考えである。
2つ目は、AIで絞り込んだ結果の手柄をGoogleが取っている、という指摘だ。AIで候補を絞り、最後にGoogleで検索してサイトに来る。GA4は、これをGoogleオーガニックとして数える。ジョン・アーント氏は、AIの利用は増えているのに流入が横ばいなのは、人がクリックしなくなったからだと書いていた。これは「AIに効果がない」という証拠ではなく、計測が追いついていないということだ。以前紹介したChatGPTが実際に読んでいるもののresoneoの調査でも、AIがページの一部だけを選んで読んでいることが分かっている。クリックされなくても、読まれることには意味がある。
3つ目は、読者層によって数字が違う、という指摘だ。BtoBの購買担当者、開発者、専門職は、一般の人よりChatGPTやClaudeをよく使う。0.62%という平均の裏で、こうした層ではもっと高い比率になっている可能性がある。地域のお店なら、AIの答えの中で決まってしまうこともある。「近くの水道修理業者」をAIに聞いた人は、たぶん5つのサイトを見比べたりせずに電話をかける。
だから、この調査も含めて、どんな平均値を使う前にも自社のGA4を確認してほしい。参照元をchatgpt.com、perplexity.ai、gemini.google.com、copilot.microsoft.comで絞り込めば分かる。GA4の探索機能だけで足り、追加のツールは要らない。自社の比率が3%なら、ヘインズ氏の調査の平均的なサイトとは状況が違う。自社の数字をもとに計画を立てるべきだ。
4つ目は、AIに取り上げられるための取り組みが、後で触れるAIエージェントの時代につながっている、という指摘だ。AIが引用するのは自社サイトの内容である。仕入れ先を選ぶAIエージェントも、今のAIツールが勧めている会社の中から選ぶはずだ。これには私も同意する。ただ、呼び方は変えたい。人にも機械にも分かりやすく、正確なサイトにすることは、SEOそのものだ。別の予算を立てる必要はないと考えている。
実務上の悩みも理解できる。GoogleがAIモードの表示を増やしているなかで、クライアントや上司に「GEOは寄り道です」と言い切るのは難しい。そういう場面では、「それもSEOの一部です」と説明するのが現実的だと思う。そのうえで、GA4のAI経由の流入を、Google検索のクリック数と並べて見てもらえばよい。
それでも、計算の結果は変わらない。どう計測し直しても、セッションの0.7%を来期の売上計画の柱にするのは無理がある。AIの影響は、クリック数に表れるより大きいかもしれない。しかし、その影響は数えられる訪問としては届いていないのが現状だ。
もっと大きな変化はAIエージェント
ヘインズ氏の投稿で、私がより役に立つと思ったのは後半だ。彼女は、AIエージェントが買いものや予約を代わりに行うウェブ(エージェンティック・ウェブ)を取り上げている。例として挙げているのは、Universal Cart、Universal Commerce Protocol、WebMCP、インテリジェント・アイウェアの4つだ。
それぞれ簡単に説明しておく。
- Universal Cartは、複数のお店の商品をGoogle Walletの中で1つの会計にまとめる仕組み。値下げや再入荷も見張ってくれるので、利用者はお店のサイトに行かずに買いものを済ませられる。
- Universal Commerce Protocol(英語)は、Google、Shopify、Stripeが運営するオープンな仕組み。AIエージェントが在庫を比べ、購入まで完了できる。販売者として記録されるのは、引き続き各事業者だ。
- WebMCP(英語)は、問い合わせフォームや見積もりツール、予約画面など、サイトの機能をAIエージェントから使えるようにする仕組み。
- インテリジェント・アイウェアは、カメラとGeminiを載せたメガネ。Googleは「AIグラス」という言い方を避けている。Android XRをベースにした最初の製品が、ちょうど出始めるところだという。
ヘインズ氏は、Googleのサンダー・ピチャイCEOが「検索はエージェントマネージャーになる」と話したと紹介している。私はこの発言を自分で確認できていないので、彼女の記述を紹介するにとどめる。ただ、挙げられた製品を見る限り、向かう先ははっきりしている。検索は「調べに行く場所」から、「用事を代わりに済ませてくれるもの」に変わりつつある。
私がGEOよりこちらを重く見るのは、買いものが行われる場所が変わるからだ。AIエージェントがGoogleの中で購入まで済ませるなら、比べられるのは商品データ、在庫、価格である。ランディングページの文章は、そもそも読まれないかもしれない。
何から手をつけるかは、扱っているものによって変わる。
物販なら、Merchant Centerの商品フィードは、もうお店の一部だ。価格、在庫、商品の構造化データが正しくないと、AIエージェントの候補に入れない。小規模なお店では、フィードの整備が後回しになっていることがある。差がつくのはここだ。
サービス業なら、「AIエージェントがうちで予約を完了するには何が必要か」を考えてみてほしい。答えが「PDFの申込書をダウンロードして電話」なら、そこを直すのが次の仕事になる。直せば、人間のお客さんにとっても予約が楽になる。WebMCPはまだ始まったばかりだが、準備なら今からでもできる。
MCPそのものについては、AIデータのマネタイズとMCP(英語)で書いた。WebMCPは、同じ考え方をAPIではなくウェブサイトに当てはめたものだ。普通の企業が今年から準備できる、最初のエージェント向けの規格だと思う。
今期やること
- どの平均値を信じる前にも、自社のLLM経由の比率を確認する。GA4の探索で参照元を4つ絞り込むだけなので、30分ほどで済む。
- キーイベントを設定し、記録されているかを確認する。設定していなかった45サイトと同じ状態なら、ほかの項目は判断できない。
- Googleへの投資は続け、今もクリックが発生するページに予算を寄せる。購入に近い検索や、社名・サービス名での検索では、AI Overviewが表示されることは情報系より少ない。
- AIエージェント向けの準備を1つ進める。物販なら商品フィードの整備、サービス業ならエージェントが使える予約や見積もりの仕組みだ。
- 明確な答え、根拠、執筆者名のあるページを作り続ける。AI向けの別プロジェクトではなく、SEOの一部として進める。
まとめ
ヘインズ氏は、私が推測で書いていたことを実データで確かめた。そして、私の予想も外れたのだ。ChatGPTからの流入はGoogleオーガニックの0.62%、LLM全体でも0.73%で、私が書いた2%ではなかった。ChatGPT経由のコンバージョン率は4.6倍高いが、コンバージョン数ではGoogleが27倍多い。ChatGPTからの流入は2025年8月から伸びておらず、調査対象のうち45サイトはコンバージョンを計測していなかった。
彼女の投稿に対するリプにあったとおり、AIの影響のすべてがクリックとしてGA4に記録されるわけではない。その点は私も同意する。それでも、訪問とコンバージョンの大半が今もGoogleから来ているという事実は変わらない。
だから私が勧めるのは、次の3つだ。予算の中心はGoogle検索に置く。GA4で自社のAI経由の流入を確認する。今期中に、AIエージェント向けの準備を1つ進める。
Kafkaiのツールも、このGoogle検索の側にある。キーワードと競合のデータ、検索順位、そしてドメイン認証後は自社のアナリティクスだ。見つけてもらい、クリックしてもらうための基本は、ここ2年のカンファレンスで言われていたほどには変わっていない。